100年に一度と言われるパンデミックに直面して、リモートワークが急速に普及しました。ところが、コロナが5類に分類され、対面でのやりとりが復活し始めた途端に、リモートワークを禁止する企業が増えてきてしまいました。
リモートワークのコミュニケーション課題や生産性が低い点などが禁止の理由のようですが、ここに今の社会の問題が凝縮されていると感じています。少し未来に目を向けるだけで違う選択肢もあると思うのです。
場所に縛られない働き方へ
メールやチャット、高品質のWeb会議システムが登場し、当たり前のようにネットワーク上で共同作業を行うようになりました。この先、5G6Gの超高速・低遅延の通信サービスが浸透するにつれ、あたかも目の前にいる状態でコミュニケーションすることも可能でしょう。
私自身の仕事で言えば、ここまで快適な環境があればリモートワークで支障はありませんし、一緒に働く仲間や顧客との関係性も問題ありません。
地方のお客様のサポートや移動時間の削減により、場所に縛られないで働けることのほうがメリットが大きいと感じています。さらに、この先海外の仕事をリモートで請け負いたいとも考えていますし、あらゆるコミュニケーションツールに翻訳機能が備わることで、日本に居ながらグローバルの仕事を手がけることが簡単にできる時代がすぐに来るでしょう。
対面を前提にしてしまうと、実現できない仕事や働き方もあると考えています。
時間にとらわれない働き方へ
必要なコミュニケーションをタイムリーに行うことは非常に大切です。だからと言って朝から晩まで同じ空間にいる必要があるのでしょうか?一日のうちどれだけの時間を直接のコミュニケーションに充てるべきでしょうか?
準備や連絡の取り方、タイミングを工夫することで、組織全体で最小限のコアタイムを設けて活動することは可能なはずです。
これまで多くの会議をしながらも中身が充実していないケースは多々ありました。
対面であればなんとなく伝わった気になって満足していたことが、実際には伝わっておらず、こちらの準備不足、説明不足をごまかしていただけのようにも感じています。
皆が少し見直すだけで「朝早く仕事を開始して、夕方は早めに終業し子どもを幼稚園に迎えにいく」、「週3日勤務で残りの日を副業や個人の大切な時間に充てる」、「他人からの連絡が少ない早朝や夕方に働きたい」といった柔軟な働き方も可能になると感じています。
技術革新が可能にする
先ほどコミュニケーションの技術革新に触れましたが、それ以外にもAIやロボットの導入により、現物を扱うような仕事にも新しい働き方は確実に広がります。コロナ禍でお客さんが減っていた飲食店でも「働くロボット」は増えましたし、物流業界でも2024年問題を契機に自動配送や省力化が待ったなしで進められています。
個人に目を向けると、このような技術革新が進み快適に働けるのは高齢就労者だと思います。通勤不要で仕事のアシストをしてくれるテクノロジーが充実すれば負担軽減になります。
技術革新は働く全ての人々に恩恵をもたらすことでしょう。
企業を変える
日本では、いまだ正社員や契約社員といった区別があり企業が社員を選んでいるように感じますが、近い将来、企業は働く人に選ばれる存在になるでしょう。
いかに魅力的な仕事と就労環境を提供できるか?、これが企業の求められる役割だと感じています。
既にプロフェッショナルな人々の間では、会社や役職に拘らず、魅力的な仕事やプロジェクトがあるから参加してみたい、という考えの人が出てきています。関わってみたいという動機と自分のライフスタイルも大切にする、それでも需要と供給が成り立っています。
働き手が自身の経験やライフスタイルを考えて仕事や企業を選択する時代には、先輩社員、後輩社員、正社員、契約社員といった区別は意味を無さなくなるでしょう。
多様性を尊重する社会へ
今起きているリモートワーク禁止の流れは、会社という一つの側面から見た生産性しか考えていないために起きています。毎日会社にいて目の前で仕事をすることだけが基準になっているのです。
ところが社会全体で考えると、場所や時間にとらわれないで仕事をし、個人の時間も大切にし、高齢者でも快適に働けるというライフスタイル全体の生産性向上のほうがはるかに意味があると感じませんか?
こちらのほうが皆が望む将来像に近いのではないでしょうか?
企業には、従来の価値観を変えようという意識改革と構造改革が必要なのです。
終わりに
急激な人口減少と高齢化、低い生産性で苦しむ日本は、従来の価値観の大切な部分を残しつつ、変えなければならないことを大胆に変えて前進するしかありません。
私自身はそのような社会全体の課題に真正面に取り組んで新しい時代を切り拓きたいと思って仕事をしています。
そして、季節ごとに快適な場所でリモートワークをし、時にはお客様に来てもらい一緒にワーケーションと週末の余暇を楽しむ。こんな未来を描きつつ、志を共にする仲間とチャレンジしていきたいと考えています。