需要予測にAI(機械学習)を活かそうと取り組んだにもかかわらず、先に進まずPoC止まりになっているプロジェクトをよく耳にします。
せっかくの取り組みを中止にしないために、乗り越えるべきポイントを説明します。
AIの予測結果を、どのように現場に適用するか検討できていない
AIツールの進化により、データ不足や特殊なユースケースは別として、誰でもそれなりの予測結果が出せるようになりました。精度や安定性という面では、問題無いレベルで活用できるタイミングになっていると思います。
しかしながら、AIによる予測結果を利用部門でどのように活かすべきか検討されておらず、予測結果だけ算出しても現場で使えていないケースが多くあります。
後続の業務フローや業務の見直しまで踏み込んで検討する
これまでの業務と何が変わるか確認できているでしょうか?
細かく見ていくと、実際に誰が予測し予測が外れて在庫や廃棄が生じた場合の責任の所在はどうなっているのか?、安全在庫を加味した発注点は誰がどのように計算しているのか?、在庫が適性化されても発注(仕入)頻度が増加して配送費が増えないか?、これらの対応方法はあらかじめ決まっているのか?属人的なのか?など、当初考えていたよりも整理すべきことがたくさんあるはずです。
場合によっては、これらを含むシステム化を考えないと運用が回らない可能性があります。
精度の良し悪しは入口に過ぎず、どのように現場業務に落とし込んでいくかがポイントだと理解しておきましょう。
現場担当者に新たな役割を担ってもらう
現場への活用が進むと、見込どおり単純な作業負担は減っていくと思いますが、イレギュラーな作業はむしろ増えることもあります。全てのケースでAIが出した予測結果を使えるようにはならないことも多いのです。
ヒトがやらなければならない特殊な判断がいるようなケースや、さらなる精度向上のための取り組み(高度化)を現場担当者に担ってもらえるように進めていくことも大切です。
技術的な知識やAIの特性などを理解して貰いながら、徐々に進めていくことになると思います。
私たちがお手伝いしている企業様では、予測の精度向上に必要なスキル習得から始めて、今では自ら精度向上やイレギュラーなケースでのシステム化に取り組めているところがあります。
- 商品単品やこれまでの商品分類では需要予測としては利用しにくいため、新たに学習・予測に適した商品分類を追加することで予測精度の向上を実現
- 予測値を評価するため、過去の販売実績や販促の有無などをダッシュボードにして確認、予測結果を鵜呑みにせず人によるチェックも実施
- 気象の急変などで予測結果を見直す必要がある場合には、注意喚起のアラートを発出して対応を促す
いずれもお客様主導で実現しています。
このように、新たな役割を担って頂けるように進めていくことも大切だと感じています。
米国ではAIの導入が急速に進みましたが、高スキル業務と低スキル業務(人間がやるしかないもの)の二極化が急速に進み、低スキル業務に従事する人の不足や低賃金化という構造問題を抱えています。
日本でも似たような構造問題は現れており、一定の環境変化は避けられない状況ですが、今の人手不足をチャンスと捉えて最大限にテクノロジーを活用できる組織、体制にシフトしていくタイミングだと思います。
<今後の役割のイメージ>
まとめ
- 単純にAIで予測できたとしても、それだけでは現場では利用できない
- 後続の業務フローや業務の見直しまで踏み込んで検討する
- 現場への浸透は、関係する担当者に新たな役割を担ってもらう取り組みが大切
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